在宅避難のデメリット、具体例8つ
在宅避難は、被災した人が避難所生活ではなく「自宅に留まり続ける」という避難スタイルのことで、今は、家の損壊が激しくない限りは在宅避難が推奨されています。
避難所での避難とは異なるメリット(プライバシーが保たれる、安心して生活できるなど)がたくさんある一方で、実は在宅避難にはデメリットも存在します。
この記事では、在宅避難の主なデメリットについて詳しく紹介します!
在宅避難の具体的なデメリットと、対策
1. 支援が届きにくい
避難所では支援物資や医療サポートが迅速に届くことが多いですが、在宅避難者には情報が行き渡りにくく、支援が遅れる場合があります。特に物資配布の情報が避難所中心に発信されることが多いため、必要な支援が得られないリスクがあります。
事例: 東日本大震災(2011年)
東日本大震災では、避難所に避難した人々には支援物資が届きましたが、在宅避難者への支援が大きく遅れました。避難所でないと物資配布が難しいという理由や、在宅避難者の把握が不十分だったことが原因です。在宅避難だと、支援物資を受け取るたびに外出する必要があります。特に高齢者や身体の不自由な人は、頻繁に外に出ることができず、食料や水が不足するケースが多発しました。
対策:
- 事前に自治体の防災計画や物資配布のルートを確認し、在宅避難者でも支援を受けられる方法を知っておくことが重要です。また、地域の防災ネットワークに積極的に参加し、避難所以外での支援体制を地域全体で共有することも効果的です。
2. ライフラインの喪失
停電や断水、ガスの供給停止が長引くと、生活が非常に困難になります。避難所では、発電機や給水車などが備えられることがありますが、自宅ではそのような支援をすぐに受けられない場合が多いです。また、トイレの利用や衛生管理も課題となります。
事例: 熊本地震(2016年)
熊本地震では、大きな揺れによるライフラインの停止が長期化しました。特に停電や断水が発生し、家に留まる選択をした人々が困難に直面しました。冷蔵庫が使えなくなり、食料の腐敗が進み、調理が困難になるといった事態が起こりました。また、断水によりトイレの使用も制限され、衛生問題が深刻化しました。
対策:
- 蓄電池やソーラーパネルを備えることで、停電時にも最低限の電力を確保できます。また、水の備蓄を1週間以上確保し、トイレ用の水は風呂に貯めておくなどの対策が有効です。加えて、カセットコンロや非常用トイレを備えておくと、調理や衛生問題にも対応できます。
3. 孤立しやすい
避難所では他の避難者と一緒に過ごすため、情報交換やコミュニケーションが活発に行われますが、在宅避難では外部との接触が限られ、孤立感を感じやすくなります。特に独居高齢者や一人暮らしの人は、精神的な負担が増えることが考えられます。地域コミュニティからの情報やサポートが得られにくく、必要な支援を受け損ねることもあります。
事例: 新型コロナウイルスの影響による避難生活
コロナ禍では避難所が密にならないようにするため、在宅避難が推奨された地域も多くありました。避難所に行かず自宅にとどまった人々の多くは、情報不足や孤立感に苦しみました。特に、高齢者や独居者は、外部との連絡が減り、精神的な負担が増したという報告がされています。
対策:
- ご近所や家族との定期的な連絡を心掛け、孤立しないようにすることが重要です。災害時には、SNSや地域のLINEグループを活用して、情報を共有し合うことで、孤立を防ぐことができます。特に一人暮らしの人は、避難計画を事前に周囲に伝えておくと良いでしょう。
4. 健康管理が難しい
在宅避難中は、医療機関へのアクセスが制限されることがあります。避難所では救護班や医療ボランティアの支援が受けられる場合がありますが、自宅では自分で健康を管理する必要があります。特に、持病のある人や妊婦、乳幼児などは、医療ケアが必要な場合に迅速な対応が難しくなります。
事例: 北海道胆振東部地震(2018年)
北海道胆振東部地震では、停電が広範囲に及び、病院の設備も一時的に機能停止しました。自宅で療養中の患者や、持病のある人が在宅避難を余儀なくされ、薬が不足したり、電動の医療機器が使えなくなったりするケースが報告されています。特に透析患者や酸素吸入が必要な人にとっては深刻な問題でした。
対策:
- 常備薬の備蓄はもちろんのこと、医療機器を使用している人は、事前に電力供給が止まった際のバックアップ(蓄電池や代替機器)の準備が必要です。また、定期的に医師と連絡を取り、災害時にどう対処するかを相談しておくと安心です。自治体に「要配慮者」として登録しておくことで、支援を受けやすくなります。
- 運動不足にならないように、在宅避難中でもストレッチや簡単な筋トレをするのがお勧めです
5. 災害リスクが継続する可能性
在宅避難の場合、住んでいる場所が完全に安全であるとは限りません。例えば、余震が続く地震災害や浸水の可能性がある洪水などでは、家自体が二次災害に巻き込まれるリスクがあります。地域が完全に復旧するまで自宅が使えない場合でも、避難所に移動するのが遅れることがあります。
事例: 西日本豪雨(2018年)
西日本豪雨の際、多くの家が浸水し、在宅避難が危険な状況にもかかわらず、自宅に留まる選択をした人がいました。特に、再度の豪雨や堤防決壊のリスクが高まっていたにもかかわらず、「自宅の方が安心だ」と感じて家を離れなかった結果、二次災害に巻き込まれたケースも報告されています。
対策:
- 自宅の安全性を冷静に判断することが重要です。避難指示や警報が発令された場合は、避難所に行く選択をためらわずに行うことが必要です。また、家の立地や構造に応じて、事前に災害時の避難先を決めておくと、リスクを最小限に抑えることができます。
- 自分の家が、在宅避難が可能かどうかの調べ方は、こちらの記事→(『自分たちが「自宅避難」可能か、確認する基準』)で紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。基本的に、避難勧告が出ているエリアでの在宅避難は危険なので推奨されていません。
6. 生活インフラの負担
避難所では給食や物資の提供が行われることがありますが、在宅避難中は自分たちで食料や水、エネルギーを確保する必要があります。避難生活が長期化する場合、備蓄が不足したり、調理ができなくなるなど、生活の質が低下することも考えられます。
事例: 台風15号(2019年)による千葉県の被害
台風15号では、千葉県内で長期間の停電と断水が続きました。在宅避難を選んだ人々の中には、生活物資が底をつき、特に水の確保が困難な状況に直面しました。また、ガソリンスタンドやコンビニも閉店し、食料や水の確保が非常に困難になりました。長引くライフラインの復旧待ちで、自宅での生活が限界に達した人も多くいました。
対策:
- 長期の備蓄計画が必要です。特に、停電や断水が続く可能性を想定して、最低でも1週間分の水、食料、生活用品を備えておくことが推奨されます。また、避難所や物資配布場所の情報を常に把握し、必要な時に外に出るタイミングを見極めることも重要です。特に困る原因である「断水」は、大震災の際は1ヶ月以上続く場合もあるので、できれば1ヶ月生活できるくらいの備蓄をしておくと、とても安心です!(参考:『災害時、断水はどれくらい続く?(最長は1ヶ月以上)』)
7. 防犯の問題
災害時には、地域の治安が不安定になることもあります。避難所と比べると、在宅避難の方が「自分の家で過ごせる」分、安全だと言われていますが、実は在宅避難ではまた別の危険があるんです。
事例: 阪神淡路大震災(1995年)
阪神淡路大震災では、被災後の混乱の中で、空き巣や盗難が頻発しました。避難所に行った人の方が狙われやすいですが、避難所に行かずに自宅避難を選んだ人々の家では、家の中に入ってきた強盗に対面で出くわしてしまうという恐怖体験も…!
対策:
- 防犯対策として、自宅の施錠や窓の補強、外部から家の様子が見えにくいような工夫をすることが有効です。とにかく、留守だとわからないような工夫を。また、ソーラーライトやセンサーライトを設置し、停電時でも家の周りを明るく保つことで、防犯効果をかなり高めることができます。また、ポストなどに「在宅避難中」と紙を貼っておくのも防犯に効果的です。
8. マンション特有の問題
自宅がマンションの場合は、特有の問題に直面することがあります。
高層階の場合、長期間エレベーターが停電で動かなくなるおそれがあります。外出のたびに毎回階段を上り下りしないといけないので、とても大変です。しかも、支援物資を受け取りに行く場合は、帰りは重い荷物を持って階段を登らないといけません…。体力のある人でないと厳しいですね。
また、低層界でも特有の問題があります。マンションの採用している下水システムによっては、震災時に下水道に水を流さなくなることがあり、その結果、災害発生後に上層階の人が無理やり流した汚物が下水に流れず、低層階の部屋から順番に汚物水が溢れ返ってくるという、絶対に避けたい事態が起こることがあります。震災後にエレベーターなどに「絶対に水を流さないでください」という張り紙が貼られるのは、この事態を防ぐためでもあります。
対策:
- 自分の住んでいるマンションが、どこに電源があるのか、災害発生時はどれくらいのスピードで復旧できるのか、また、下水のシステムがどうなっているのかをしっかり把握しておきましょう。
まとめ
いろいろなデメリットはあるものの、「避難所生活」よりも「在宅避難」の方がずっと優っている点が多いです。
ただ、備蓄なしの在宅避難はとても厳しいのが現実です。できるだけ快適に在宅避難ができるように、普段からしっかり備蓄しておくこと大切になってきます!
ちなみに、「避難所」の方が「在宅避難」よりも優っている点としては、
- 支援が届きやすい
- 孤立しにくい
などが挙げられます。
一人暮らしの方や、家に十分な備蓄が用意できていない人(支援が必要な人)、避難勧告が出ているエリアの方は、在宅ではなく避難所に移った方が良いでしょう。
しかし、自家に十分な備蓄ができていて、家族や一緒に住んでいる人がいるのであれば、在宅避難の方がずっと快適に過ごせることは確かです!
快適な在宅避難のために、普段から備えましょう!!
次の記事では、『在宅避難で困りがちなことと、その対策方法』も詳しく紹介しているので、合わせてチェックしてみてください♪