災害の知識

災害時には「畑や庭に穴を掘って用をたせばいい」と思っていませんか?

管理者

田舎に住んでいると、災害時のトイレ問題は
「畑があるからなんとかなる」
「家の庭に穴を掘ればいいだけ」
と軽く見られがちです。


しかし、実は“畑に穴を掘ればOK”という考えは、いざという時ほとんど機能しません。


被災地の現場で実際に起こった「危険」「失敗例」を交えながら、その理由を解説します。

1. 穴を掘る体力が残っていない現実

地震、豪雨、停電…。
避難や片づけ、断水後の生活対応は、想像以上に体力を奪います。

災害直後は、
・家族の安否確認
・片付け
・落下物の整理
・食事と水の確保
・情報収集
などで1〜2日ほとんど休めません。

疲労で歩くのもやっと、
という状態は珍しくありません。

そんな時にスコップを持って穴を掘る、
という行為は現実的ではないのです。

実際、地震の被災者ヒアリングでは
「スコップを持つ手も震えていた」
「腰を痛めて掘れなかった」
という声が多くありました。

とくに高齢化率の高い地域では、
“穴を掘る”という行為そのものがすでにハードルです。

すでに震災によって怪我をしているかもしれない中で、「穴を掘る」という作業は想像以上に負担になります。

「断水後、庭で穴を掘ろうとしたが、冬の固い地面で20cmも掘れず断念。結局、家の中でレジ袋+猫砂で急場をしのいだ」

「庭に穴を掘ろうと思っていたが、地震で落ちた・倒れた物で家の中がぐちゃぐちゃで、それを片付けるだけで手いっぱいで、穴を掘る様な体力は残っていなかった。考えが甘かった。」

――というケースがありました。
「畑や庭がある=すぐ使える」というわけではありません。


2. 外で用を足す危険さ ― 性被害・思わぬ怪我

“人が少ない田舎だから安心”とは限りません。

● 女性の“排泄弱者化”

停電で夜は真っ暗、倒木や建物で影も多い。
そんな中で女性や子どもが外に出ると、
性被害リスクが急上昇します。

実際、2018年西日本豪雨の避難地域では、
夜間の屋外トイレ利用中に後をつけられた例や、
声をかけられ恐怖を感じたという相談が寄せられました。

● 暗闇での転倒・ケガ

畑は段差、溝、倒れた農具、ビニール資材など危険が多い場所。
地震後は特に“地面が不安定”です。

災害後の庭や畑は、ただの空き地ではありません。

・倒れた物置
・割れた鉢
・散乱したガラス
・地面の亀裂
・水を含んでぬかるむ土
・獣害対策の金網や支柱が倒れている
こうした障害物が夜の暗闇ではほとんど見えず、
歩き回ること自体が危険になります。

夜、懐中電灯1つで畑に向かった70代男性が、
転倒して太ももを強打。翌朝、腫れあがり歩行困難になった事例もあります。

トイレのためにケガをしてしまえば、復旧作業どころではありません。

さらに、「トイレが使えなくなる状況(停電、断水)」では、外は大雨や台風かもしれません。そうなると、「外で用を足せばいい」という考えでいるのは難しそうです。

最近は、全国的に「熊被害」が話題になっていますが、
災害時には、熊の餌になる様な物や家畜、ペット等が放置された状態になる為、外で用を足す行為は、熊被害に遭う確率を上げてしまう可能性もあります。

3. “土壌汚染”と“異臭”という意外な問題

畑は食べ物をつくる場所。
そこに排泄物を直接埋めると、次の問題が起こります。

● 大腸菌・ノロウイルスのリスク

排泄物を土に埋めれば終わり――ではありません。

・大腸菌
・ノロウイルス
・寄生虫卵
などは土中に長く残り、
とくに野菜を育てる畑の場合は深刻な問題を引き起こします。

家庭菜園が“汚染された場所”になってしまう危険性もあります。

特に生食する野菜(レタス、トマト、ハーブ類)は危険です。

また、埋め方が浅いと動物が掘り返し、
悪臭や害獣トラブルにもつながります。

「畑なら大丈夫」というのは、
衛生面から見ても危険な思い込みなのです。

● 近隣トラブル

田舎は隣の畑が近いことも多く、
風向きによって臭いが届き「どこかで排泄している?」
と問題になるケースがあります。

災害後に地域がギスギスすると、
その後の復旧や助け合いにも悪影響を与えます。


4. 夜間は“本当に何も見えない”という盲点

都市部と違い、田舎は街灯が少ない。
停電すれば、月明かりだけです。

倒壊したブロック塀、ひび割れた地面、
散乱したガラス片や農具…。

そんな環境で夜間に外へ行くことは、
想像以上に危険です。

以前、台風後の停電時に、
海沿いの集落で“海に近づきすぎて転落しそうになった”という事例がありました。
(音も聞こえないほどの暗闇と疲労で距離感が失われていた)

トイレは「屋外に行く」というだけで立派な避難行動なのです

5. 防災は「想像できるかどうか」で差がつく

災害時のトイレ問題について話すと、
「最悪、庭や畑に穴を掘ればなんとかなるでしょ」
と言われることがあります。

けれど、この発想には大きな落とし穴があります。
多くの人が思い浮かべている“穴を掘って用を足す自分”は、
ほとんどの場合――
晴れていて、昼間で、心も体も元気なとき の想像です。

しかし、災害はいつ起きるかわかりません。
真っ暗な深夜かもしれないし、豪雨の最中かもしれません。
ケガをしているかもしれないし、精神的に疲れ切っているかもしれません。

そして、現実に起こる状況は、多くの人が予想するよりずっと過酷です。

■ 穴を掘ろうと思える=家はほぼ無事、という現実

もう一つ知っておいてほしいことがあります。

スコップを持って穴を掘る余力がある、
外に出て作業しようという気力がある――
という状態は、裏を返せば

家屋の損傷が比較的軽い場合がほとんどです。

家が部分的に壊れた程度なら、自宅トイレは
「水が流れないだけ」というケースが一般的です。
便器が割れていなければ、
簡易トイレセットを便器にかぶせて使うことができます。

つまり、
“穴を掘るくらいなら、自宅トイレを簡易化する方が安全で確実”
という状況のほうが圧倒的に多いのです。

一方で、便器が外れるほど大きく家が破損している場合は、
家そのものが危険で、外で穴を掘る…などと言っている場合ではなく、
避難所での生活が必須 になります。

庭に穴を掘るという選択肢は、
実は「ちょうどいい被害レベル」に見えて、
現実には成り立たないことが多いのです。

■ 想像できれば、行動が変わる

「穴を掘ればどうにかなる」という考えは、
平和な日常の中で思いつくイメージにすぎません。

しかし、
・暗闇
・雨
・寒さ
・疲労
・怪我
・家の損傷
・散乱した庭
こうした“実際の災害環境”を思い描くと、
選ぶべき行動は自然と絞られます。

防災は、“道具の多さ”ではなく、
どれだけリアルに未来を想像できるか で決まります。

■ “現実にあり得る状況”を踏まえた最善策

だからこそ、災害トイレの基本はシンプルです。

【1】家が使えるなら → 自宅トイレを簡易化して使う

今は、自宅のトイレをかんたんに「災害用」にできるセットがあります!

【2】家が危険なら → 迷わず避難所へ

避難所には、簡易トイレや仮設トイレの整備があります。
夜間の安全確保のためにも、外での排泄は避けるべきです。

【3】穴掘りは“最終手段中の最終手段”

実際の災害現場ではほとんど使われていません。
危険・非衛生・非効率で、持続性もありません。

● 簡易トイレセットの用意をしよう!

防臭に特化した災害用トイレがあれば、臭いもかなり抑えられます。

できれば、「在宅避難」で屋内で快適に用をたせるよう
災害用トイレや簡易トイレの準備をしておくことをお勧めします!

わたしたちについて
株式会社ニコラス
株式会社ニコラス
防臭に特化した災害用トイレを開発している会社です!
私たちは災害用トイレセットを開発・販売している会社です。元々は、愛知県の地元の電気屋さんでしたが、現在は自分たちで開発した防臭モコモコ泡スプレー「シューポン」(特許技術)を使って、世の中の悩みを解決する商品作りに励んでいます。困ったことに遭遇した時、困ったままで我慢しない、して欲しくない。 そのために私たち「ニコラス」があります。
災害用トイレ看板
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